日曜論壇1 「 土作り基本に農地再生 」 2001年10月14日
「ごみを宝に!」をキャッチフレーズに、生ごみたい肥化と土作りに取り組んで五年
の歳月がたとうとしている。
今では、芳賀町の公共施設、商店会、工業団地の企業など二十五カ所から一日約1.5-
2㌧の生ごみを収集し、たい肥化するまでになった。
だが、ナシ、米、野菜を栽培している、ただの百姓であることに変わりはない。
農は土、地力が根本であり、土作りが大切であることは、誰もが認めることである。
私たちはその大切な農地を、いつの間にか壊してしまったのだ。
背景には化学肥料と農薬の大量使用を致し方ないこととする農業生産の現状があっ
た。
昔ながらの農は、手に入りやすい身近な有機物をたい肥に転換し、農地に還元した。
私たちの食も残せば生ごみ、食べたらウンコ(人ぷん尿)として排出される。
「食べ物を粗末にするな」と言うが、生ごみだって自然の恵みなのである。
草木が枯れて土に返るがごとく、田や畑、海や山の自然の恵みは、田や畑の自然に返
る。これが当たり前で、こうして資源循環する姿こそ自然の本質だと思う。
だが、このサイクルが当たり前であるがゆえに、自然への感謝と、そのサイクルに息
を合わせるという意識が欠けてしまったのだと思う。
そこで、自然環境と調和し、土作りを基本とした昔ながらの農を手本に、地力の衰え
た農地の再生と、豊かな土をよみがえらせようと始まったのが私たちの取り組みであ
る。
生ごみは、パッカー車と呼ばれるごみ収集車で町内を駆け巡って集める。
魚屋さん、豆腐屋さん、そば屋さん。みんなが待っていてくれる。
「ドンカメちゃんが来た」と、子供が走ってくることもしばしば。
人が待っていてくれるというのは、とてもありがたいことである。
保育園、小学校、中学校、老人ホーム、企業の食堂。三時間の収集作業は、そうした
地域の人々に支えられ、毎日行われている。
こうして集めた生ごみは、水分調整材のもみ殻、おがくずと混ぜ合わせ、発酵環境を
整えさえすれば、自然の微生物がたい肥に転換してくれる。
たい肥の山の天地を返す「切り返し」を基本とした発酵たい肥は、昔ながらのたい肥
積みや、踏み込み温床で見られる農家の知恵で、技術の一つなのだ。
しかし、私たちがたい肥を作っているわけではない。
それも自然の成す尊い働きの一部なのである。だから、施設といっても、簡易で最小
限のものしか整備していない。
腐葉土を目標にしてできた発酵たい肥は、地域農家の理解を得ることで初めて循環農
産物として流通できる。
とても地道な歩みではあったが、地元産のたい肥が生まれ、生ごみを宝(たい肥)に
転換し、喜び(循環農産物)として循環するシステムが大きく機能し始めたのであ
る。
本年度、芳賀町は「環(わ)の町 芳賀」と冠して、環境保全率先実行計画を、モデ
ル事業を通して推進し、循環型社会形成に向けて積極的な取り組みを開始した。
微力ながら私たちも、自治体・農業・工業・商業と住民が有機的につながり、喜びの
うちに資源が循環する「環の町 芳賀」づくりに積極的に参加していきたい。こうし
た取り組みによって、地域が連携して自立する町、喜びが循環する町が実現できると
考えている。