日曜論壇3   「 子どもたちにたい肥の話 」   2001年12月23日

 

 

昨年12月とことし5月の計三回、芳賀町内の小学校で一時間ずつの授業をさせて

 

いただいた。

 

 

芳賀東小三年生の担任教師から、「芳賀町の農産物 ひみつ発見!」ドリームタイム

 

(総合学習)の時間に「農産物への理解が深まるよう、たい肥や有機肥料の話をして

 

ほしい」と依頼されたのである。

 

詳しく話を聞くと、子供たちは農家を訪れ、作物を育てる喜びや苦労、栽培上の秘密

 

を聞いてきた。

 

各グループが調べた結果、有機肥料やたい肥を土に入れると野菜がおいしくなること

 

を知ったという。「おいしい農産物を作る秘密は、どうやら土にあるようだ」と気付

 

いたのである。

 

 

化学肥料や有機肥料、たい肥の作り方、自然のサイクルについて解説。「土が元気だ

 

と、育った野菜も元気でおいしい。食べたみんなも元気になる」と話した。

 

 

その後、先生が「みんなでたい肥を作り、農園に入れて元気でおいしい野菜を食べて

 

みよう」とつなぎ、子供たちによるたい肥作りが始まった。

 

 

校庭の落ち葉や鶏小屋、ウサギ小屋のふんを集め、たい肥の材料も家から持ち寄る。

 

もちろん、給食の残飯も入れた。子どもたちの元気な声が飛び交う中、今では目にす

 

ることのない、たい肥塚が作られていったのである。

 

たい肥塚の切り返しをした後、たい肥を農園に入れて、いろいろな野菜を育てたよ

 

うだ。

 

 

ことしの夏には、水橋保育園の園長から講話の依頼があった。保育園の年ごろも、

 

子どもの成長段階ではとても大切な時期なのだという。快諾はしたが、どう話した

 

ら、子どもたちに理解できるか、分からなかった。

 

 

小学校の先生や幼稚園で働いている従妹(いとこ)に相談したところ、「まだ字を読

 

めない子もいる」という。そこで、紙芝居を作ることにした。

 

 

「ごみを宝に」という内容で、野菜の絵をたくさんかいた。園児たちに「この野菜の

 

名前を知っている人」と聞くと、「ハイ、ハイ…」と次々に手が挙がった。

 

「好きな野菜は、嫌いな野菜は」と続け、「これを食べたら何が残る」と質問した。

 

「皮、骨、生ごみ…」という答えが返ってきた。

 

 

「あれ、生ごみが泣いているよ。どうしてかな」と場面を変える。

 

 

僕たち、ごみ袋に入れられ、火で焼かれちゃうんだ。行きたくないよ。家に帰りた

 

いよー、って泣いているんだ

 

 

「みんなどうする?」。

 

 

園児たちから「かわいそう」「おうちに返してあげよう」と声が上がった。

 

 

「野菜さんたちの家はどこ」と続けた。「はたけ」と園児たち。「ご飯の家はどこ」

 

にも「たんぼ」と素直な答えが返ってきた。

 

「どうしたら帰れるかな。そうだ。肥料に変身させてあげれば土に帰れるね。肥料を

 

入れると土が元気になって、野菜も喜んで育ってくれるよ」

 

「生ごみさんたちが家に帰れてよかったね。みんな給食、残さないように食べよう

 

ね」。園児たちがサツマイモを植えた保育園の畑に肥料を入れる場面につなぎ、「た

 

くさんのサツマイモが取れるといいね」と紙芝居を続けた。

 

 

秋になって芳賀東小の児童たちからお礼の手紙をたくさんもらった。

 

保育園からは「落ち葉で焼き芋を作るから食べに来て」と連絡が来て、園児たちと一

 

緒にごちそうになった。

 

 

子どもたちは地域の宝であり、地域ではぐくまねばならない貴い宝だ、と痛感した。

 

このような機会を与えてくれた先生方に、心から感謝している。