日曜論壇5    「有機の里」目指す意欲     2002年3月3日

 

 

二月二十二日から三日間、九州・佐賀県に行ってきた。二十三日に江北町で開かれた

 

廃棄物をゼロにしようというゼロエミッションシンポジウム~ゴミを宝に~「循環型

 

のまちづくりをめざして」に出席し、コーディネーターを務めてきたのだ。

 

 

会場内には、ゴミの分別のモデル展示と啓蒙用のビデオ放映、パンフレットの配布、

 

堆肥を使った農産物の試食コーナー、屋外のテントでは堆肥を使った農産物の展示即

 

売が行なわれ盛り上がりを見せていた。

 

 

国連大学高等研究所ゼロエミッションプロジェクトマネージャー・鵜浦先生の基調講

 

演の後、江北町での生ゴミ堆肥化の実験的取り組み取り組みが発表され、パネルディ

 

スカッションに移った。

 

 

実験に参加した商工会会長・住民代表・農家、そして町環境課長がパネリストとして

 

各報告や感想そして今後の展開を述べた。

 

各パネリストとも、「資源循環と環境への取り組みは重要である」「分別に手間はか

 

からん」「生ゴミ堆肥の利用推進をしよう」などと、総じて実験を評価し、「今後、

 

全町に広げよう」と盛り上がっていた。

 

 

その中でもビックリしたのは、観音下区住民代表のご婦人パネリストからの発言であ

 

る。「何であんたんとこだけしよる。どぎゃんしてうちんのとこしてくれんの?」

 

と、多くの主婦から言われたというのである。

 

この実験的取り組みは、学校、商工会、そして観音下区の住民四十世帯に限定して行

 

われた。そのため、勘違いも生じ、「あんたのとこだけずるい」と、対象外の他地区

 

から批判が出たというのだ。

 

これまでに県レベルの研究開発事業を二年間、町の実験事業を二年間それぞれ委員を

 

務め、私も佐賀県に四年間足を運んだ。その苦労が、この一言で一瞬のうちにスーッ

 

と消えていくのを感じた。

 

シンポジウムが終わると婦人会の協力のもと、手作りぜんざいが配られ舌鼓を打ち、

 

満足して会場を出ると、生ゴミ堆肥にパンジーの花とプランターのプレゼントまで付

 

いているのだ。

 

何と豪華で実のある演出だろう。関係者の意気込みを十分感じさせるシンポジウムで

 

あった。

 

 

江北町は人口一万弱の町だが、商工会を中心としてゼロエミッションに取り組んで

 

きた。

 

それには基本に町の方針として「有機の里」を目指す、という基盤があったのだが、

 

理解する早さと深さおよびそれに伴う取り組みや行動は目を見張るものがある。

 

地域性なのであろうか、それとも危機管理意識の高さからなのか。

 

2000年には環境庁長官賞(現環境省)までいただいたのだ。

 

 

佐賀県は02年度予算に、地場産品を地元で消費する地産地消推進のための予算を計上

 

し、積極的に進めていく方針である。県や町の取り組む意欲と理解の深さを感じない

 

わけにはいかない。

 

 

これを一言で地域性なのかといってしまっては失礼なのであろう。ニュースも歌も、

 

ファッションも情報は全国一律に流れているのだ。

 

 

中央から遠く離れた地方経済の、自立に向けた取り組みが、気付いた地域から始まっ

 

たようである。